三叉神経痛は、顔の感覚を伝える三叉神経に関連して、顔の片側に非常に強い痛みが繰り返し起こる病気です。
典型的には、電気が走るような、あるいは鋭く突き刺されるような痛みが、数秒から数十秒程度の短い発作として繰り返されます。
歯磨き、食事、会話、洗顔、ひげ剃り、顔に触れること、冷たい風など、普段は痛みを感じないような刺激がきっかけとなって痛みが誘発されることがあります。
顔の痛みがあるからといって、すべてが三叉神経痛とは限りません。歯や顎の病気、副鼻腔炎、帯状疱疹後神経痛など、さまざまな原因があるため、症状の特徴を確認し、必要に応じてMRIなどの検査を行うことが重要です。
三叉神経とは
三叉神経は、顔の感覚を脳へ伝える重要な神経です。
眼の周囲から額にかけての領域、頬から上顎にかけての領域、下顎から口の周囲にかけての領域に分かれて、顔の感覚を伝えています。
三叉神経痛では、この神経が異常に興奮することで、発作性の強い痛みが生じると考えられています。
三叉神経痛の症状
典型的な三叉神経痛では、以下のような特徴があります。
- 顔の片側に強い痛みが繰り返し起こる
- 電気が走るような痛み
- 突き刺されるような鋭い痛み
- 数秒から数十秒程度の短い発作を繰り返す
- 歯磨き、食事、会話などで痛みが誘発される
- 顔を洗ったり、触れたりすると痛みが出る
- 冷たい風が顔に当たると痛む
- 痛みが起こる場所がある程度決まっている
痛みは非常に強く、発作を繰り返すことで、食事や歯磨き、会話などの日常生活を避けるようになることもあります。
一方で、痛みが常に続く場合や、顔の感覚が鈍い、しびれるなどの感覚障害を伴う場合には、典型的な三叉神経痛とは異なる病気が関係している可能性があります。
三叉神経痛の原因
三叉神経痛には、いくつかのタイプがあります。
血管による三叉神経の圧迫
三叉神経痛では、脳幹から三叉神経が出てくる部分の近くで、血管が神経に接触・圧迫していることがあります。
このような神経と血管の関係が、三叉神経の異常な興奮に関係していると考えられています。
ただし、MRIで血管と三叉神経が接触していることだけで、三叉神経痛の原因と断定することはできません。
症状の特徴とMRIなどの画像所見を合わせて、神経血管圧迫が症状に関係しているかを判断します。
二次性三叉神経痛
まれに、三叉神経の周囲にある腫瘍、多発性硬化症などの病気が原因となって、三叉神経痛に似た症状が起こることがあります。
そのため、三叉神経痛が疑われる場合には、症状だけで判断せず、必要に応じてMRIなどで二次性の原因がないか確認することが重要です。
三叉神経痛の検査
三叉神経痛は、まず痛みの性質や誘発される状況などを詳しく確認し、神経学的診察を行います。
そのうえで、必要に応じて画像検査を行います。
MRI検査
MRIは、三叉神経痛の診断において重要な検査です。
高分解能のMRIを用いて、
- 三叉神経と血管との位置関係
- 三叉神経周囲の構造
- 脳腫瘍などの構造的病変
- 多発性硬化症などを疑う病変
などを評価します。
特に三叉神経と血管との関係を詳しく調べる場合には、通常の頭部MRIに加えて、三叉神経を詳細に描出する撮像法を組み合わせることがあります。
ただし、MRIで血管と三叉神経の接触が確認された場合でも、それだけで三叉神経痛の原因と判断するわけではありません。
三叉神経痛の治療
三叉神経痛では、まず薬による治療を行うことが一般的です。
薬物療法
三叉神経痛では、一般的な鎮痛薬だけでは十分な効果が得られないことがあります。
治療では、神経の異常な興奮を抑える薬を使用します。
効果や副作用を確認しながら、患者さんの状態に応じて薬の種類や量を調整します。
薬によっては、眠気、ふらつき、吐き気、皮膚症状、血液検査値の異常などの副作用が生じることがあるため、必要に応じて血液検査などを行いながら治療します。
また、第一選択薬で十分な効果が得られない場合や、副作用のために継続が難しい場合には、他の薬を追加・変更することがあります。
手術治療
薬物治療で十分な効果が得られない場合や、副作用のために薬を継続できない場合には、手術治療が検討されます。
微小血管減圧術
MRIなどで三叉神経への血管による圧迫が疑われ、手術が適切と判断された場合には、微小血管減圧術(microvascular decompression:MVD)が検討されます。
微小血管減圧術では、三叉神経を圧迫している血管を神経から離し、神経への圧迫を解除します。
神経を切断したり損傷させたりする治療ではなく、三叉神経そのものを温存することを目的とした手術です。
典型的な三叉神経痛で神経血管圧迫が確認され、手術が適切と判断される場合には、重要な治療選択肢となります。
その他の治療
患者さんの年齢、全身状態、MRI所見、これまでの治療経過、手術への希望などによっては、微小血管減圧術以外の治療が検討されることもあります。
ガンマナイフなどの定位放射線治療や、三叉神経に対して経皮的に処置を行う治療などがあります。
これらの治療には、それぞれ効果や再発、顔面のしびれなどの合併症について異なる特徴があるため、治療方法は患者さんごとに検討する必要があります。
三叉神経痛と顔の痛みの違い
顔の痛みがある場合、必ずしも三叉神経痛とは限りません。
例えば、
- 歯の病気による痛み
- 顎関節症
- 副鼻腔炎
- 帯状疱疹後神経痛
- 持続性の顔面痛
- 三叉神経の障害による痛み
など、さまざまな病気があります。
特に、痛みが持続する、顔の感覚が鈍い、しびれがある、両側に症状があるなど、典型的な三叉神経痛とは異なる症状がある場合には、他の病気が隠れていないかを確認することが重要です。
このような症状でお悩みではありませんか?
- 顔の片側に電気が走るような痛みがある
- 顔に触れると激痛が走る
- 歯磨きや食事をすると顔が痛む
- 会話をすると顔が痛くなる
- 冷たい風が顔に当たると痛い
- 顔の痛みを繰り返している
- 歯科で異常がないと言われたのに顔が痛い
- 顔の痛みが強く、食事や歯磨きを避けるようになった
このような症状がある場合には、三叉神経痛の可能性があります。
当院での診療
当院では、顔面の痛みについて、三叉神経痛を含めたさまざまな原因を考えながら診察します。
痛みの部位、性質、持続時間、誘発される動作などを詳しく確認し、必要に応じてMRIなどの画像検査を行います。
三叉神経痛が疑われる場合には、薬物治療を中心に症状をみながら治療を行います。
薬物治療で十分な効果が得られない場合や、MRIで神経血管圧迫が疑われる場合などには、微小血管減圧術などの外科的治療について専門医療機関と連携して検討します。
顔の痛みは、三叉神経痛以外の病気によって起こることもあります。症状に応じて歯科、耳鼻咽喉科、神経内科などとの連携が必要になる場合もあります。
よくある質問
- 三叉神経痛は歯の病気ではないのですか?
-
三叉神経痛は、歯そのものの病気ではありません。
ただし、三叉神経痛では歯や歯ぐきに強い痛みを感じることがあるため、歯の病気と間違われることがあります。
歯科で検査をしても異常がないにもかかわらず、電気が走るような痛みを繰り返す場合には、三叉神経痛の可能性があります。
- 三叉神経痛ではMRIが必要ですか?
-
三叉神経痛が疑われる場合には、MRIによって三叉神経周囲の構造や、腫瘍などの二次性の原因、血管との位置関係を確認することが重要です。
ただし、MRIで血管が三叉神経に接触しているからといって、それだけで三叉神経痛と診断するわけではありません。
- 三叉神経痛は薬で治りますか?
-
薬によって痛みを十分にコントロールできる方もいます。
一方で、薬の効果が不十分であったり、副作用のために十分な量を使用できなかったりする場合があります。
その場合には、他の薬への変更や追加、手術などの治療方法を検討します。
- 顔がピクピクするのも三叉神経痛ですか?
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通常は異なります。
三叉神経痛は主に顔の痛みを起こす病気です。
一方、片側のまぶたや口の周囲などが自分の意思とは関係なくピクピク動く場合には、顔面痙攣の可能性があります。
顔面痙攣については、別の病気として診断・治療を行います。
