脳動脈瘤は、脳の動脈の一部が膨らんでできる「こぶ」のような病変です。多くは脳の底部を走る血管の分岐部などに生じ、破裂するとくも膜下出血を起こすことがあります。
一方で、脳動脈瘤があっても破裂せず、生涯にわたって症状を起こさない場合もあります。特にMRI・MRAなどの検査で偶然発見される未破裂脳動脈瘤では、動脈瘤の大きさ、部位、形状、増大の有無、年齢、家族歴などを総合的に評価し、経過観察と治療のどちらが適切かを判断することが重要です。
脳動脈瘤とは
脳動脈瘤(intracranial aneurysm)は、脳の動脈壁の一部が膨らんだ状態です。
代表的なものは、血管壁の一部が袋状に膨らむ嚢状動脈瘤です。多くは脳動脈の分岐部に形成されます。
未破裂脳動脈瘤の多くは無症候性ですが、動脈瘤が大きくなると周囲の神経を圧迫して症状を起こしたり、破裂してくも膜下出血を起こしたりすることがあります。
未破裂脳動脈瘤
未破裂脳動脈瘤は、破裂していない状態で偶然発見されることが多い病変です。
脳ドックや頭痛、めまいなどの検査でMRI・MRAを行った際に見つかることがあります。
重要なのは、未破裂脳動脈瘤が見つかったからといって、すべての患者さんに手術や血管内治療が必要になるわけではないということです。
治療を検討する際には、
- 動脈瘤の大きさ
- 発生部位
- 形状や不整形の有無
- 動脈瘤の増大
- 喫煙
- 高血圧
- 年齢
- くも膜下出血の既往
- 家族歴
などを総合的に評価します。
動脈瘤の破裂リスクと、治療に伴う合併症のリスクを比較したうえで、経過観察を選択することもあります。
脳動脈瘤が破裂すると
脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を起こすことがあります。
典型的には、突然発症する非常に強い頭痛が現れます。「今まで経験したことのない頭痛」「突然バットで殴られたような頭痛」と表現されることもあります。
吐き気・嘔吐、項部硬直、意識障害などを伴うこともあります。
くも膜下出血は重篤な状態になる可能性があり、再出血や脳血管攣縮、遅発性脳虚血、水頭症などの合併症にも注意が必要です。
突然の激しい頭痛や意識障害が生じた場合には、外来受診を待たず、救急車を要請してください。
脳動脈瘤による症状
未破裂脳動脈瘤の多くは無症状です。
しかし、動脈瘤が大きくなった場合や、特定の部位に生じた場合には、周囲の神経を圧迫して症状を起こすことがあります。
例えば、動眼神経の近くに生じた動脈瘤では、
- まぶたが下がる
- 物が二重に見える
- 瞳孔の左右差が生じる
などの症状がみられることがあります。
ただし、頭痛があるからといって、必ずしも脳動脈瘤が原因とは限りません。頭痛の原因を適切に評価することが重要です。
脳動脈瘤の検査
脳動脈瘤の評価では、MRI・MRA、CT・CTAなどの画像検査を用います。
MRI・MRA
MRA(MR angiography)は、造影剤を使用せずに脳血管の状態を評価できる検査です。
脳動脈瘤のスクリーニングや経過観察に広く用いられています。
ただし、小さな動脈瘤や血管の重なりがある部位では、MRAだけでは判断が難しい場合があります。
CT・CTA
CTA(CT angiography)では、造影剤を使用して脳血管を詳細に評価します。
動脈瘤の大きさ、形状、周囲の血管との位置関係などを評価する際に役立ちます。
脳血管撮影
必要に応じて、カテーテルを用いた脳血管撮影(digital subtraction angiography:DSA)が行われます。
脳血管撮影では、動脈瘤の詳細な形態や分岐血管との位置関係をより正確に評価できます。
治療を検討する場合には、治療方法を決定するために重要な検査となることがあります。
未破裂脳動脈瘤の経過観察
未破裂脳動脈瘤では、治療を行わず定期的な画像検査で経過をみることがあります。
経過観察では、動脈瘤の大きさだけでなく、形状の変化や新たな不整形の出現、増大の有無などを確認します。
動脈瘤が増大した場合や形状が変化した場合には、破裂リスクが変化する可能性があるため、治療の必要性を改めて検討します。
また、高血圧の管理や禁煙など、脳動脈瘤の破裂リスクに関係する生活習慣への対応も重要です。
検査間隔は、動脈瘤の大きさや部位、形状、これまでの経過などによって異なるため、一律に決めるものではありません。
脳動脈瘤の治療
未破裂脳動脈瘤に対して治療を行う場合、主に以下の2つの方法があります。
開頭クリッピング術
開頭クリッピング術は、頭蓋骨を一部開け、動脈瘤の根元をクリップで閉鎖する手術です。
動脈瘤への血流を遮断することで、将来的な破裂を予防します。
動脈瘤の部位や形状によっては、長期的な閉鎖が期待できる一方、開頭手術に伴う身体的負担や神経学的合併症などを考慮する必要があります。
血管内治療
血管内治療は、カテーテルを足の付け根や手首などの血管から挿入し、脳動脈瘤まで進めて、動脈瘤への血流を遮断する治療です。開頭手術を行わずに治療できることが大きな特徴です。
代表的な方法がコイル塞栓術です。動脈瘤の内部にプラチナ製のコイルを留置し、血液が流れ込まないようにすることで、動脈瘤の破裂を予防します。
動脈瘤の入口(ネック)が広い場合には、コイルが動脈瘤の外へ逸脱しないように、ステントを血管内に留置してコイルを支える「ステント併用コイル塞栓術」が行われることがあります。
また、動脈瘤の形状や大きさ、発生部位によっては、フローダイバーター(flow diverter)と呼ばれる特殊なステントを用いる治療が選択されることがあります。フローダイバーターは、動脈瘤の入口を覆うように血管内へ留置することで、動脈瘤内への血流を減少させ、時間をかけて動脈瘤を血栓化・閉塞させることを目的としたデバイスです。特に、内頚動脈などに生じた大型・巨大動脈瘤や、従来のコイル塞栓術が難しい一部の動脈瘤で用いられます。
さらに、主に中大脳動脈分岐部などの特定の部位に生じた嚢状動脈瘤では、WEB(Woven EndoBridge)と呼ばれる網状のデバイスを動脈瘤内部に留置する治療が行われることがあります。WEBは動脈瘤の入口部分を内側から覆うことで、動脈瘤内への血流を抑え、閉塞を促す治療です。
このように、現在の脳動脈瘤に対する血管内治療には複数の方法があり、動脈瘤の大きさ・形状・部位、周囲の分岐血管との位置関係、患者さんの年齢や全身状態などを総合的に判断して治療方法を選択します。
また、血管内治療では治療後に動脈瘤が再開通することがあるため、治療方法に応じてMRI・MRA、CTA、脳血管撮影などによる定期的な画像フォローが必要となる場合があります。
脳動脈瘤の破裂を予防するために
脳動脈瘤がある方では、破裂リスクをできるだけ抑えるために、血圧を適切に管理することが重要です。
また、喫煙は脳動脈瘤の形成や破裂リスクに関連するため、禁煙が推奨されます。
過度の飲酒についても注意が必要です。
脳動脈瘤が見つかった場合には、自己判断で経過をみるのではなく、動脈瘤の特徴と個々の破裂リスクを評価したうえで、定期的な画像検査の必要性や治療の適応について専門医に相談することが大切です。
当院での診療
当院では、MRI・MRA、CTなどを用いて、脳動脈瘤を含む脳血管疾患の評価を行っています。
未破裂脳動脈瘤が見つかった場合には、動脈瘤の大きさや部位、形状などを評価し、経過観察が適切か、専門医療機関での精密検査や治療の検討が必要かを判断します。
治療が必要と考えられる場合には、脳血管外科・血管内治療を専門とする医療機関と連携して対応します。
また、脳動脈瘤の経過観察中の方についても、必要に応じて画像検査を行いながら、専門医療機関と連携してフォローします。
なお、突然の激しい頭痛、意識障害、急な麻痺など、くも膜下出血や脳卒中が疑われる症状がある場合には、当院への受診を待たず救急車を要請してください。
よくある質問
- 脳動脈瘤が見つかったら、すぐに手術が必要ですか?
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必ずしも手術が必要というわけではありません。
未破裂脳動脈瘤では、動脈瘤の大きさ、部位、形状、増大の有無、年齢、既往歴、家族歴などを総合的に評価し、破裂リスクと治療に伴うリスクを比較して方針を決定します。
小さな動脈瘤などでは、定期的な画像検査による経過観察が選択されることもあります。
- 脳動脈瘤があると頭痛が起こりますか?
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未破裂脳動脈瘤の多くは無症状です。
頭痛があるからといって、脳動脈瘤が原因とは限りません。一方、突然発症した非常に強い頭痛は、くも膜下出血の重要な症状であるため、緊急の対応が必要です。
- MRIで脳動脈瘤を調べることができますか?
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MRAによって脳血管を評価し、脳動脈瘤を発見できる場合があります。
ただし、動脈瘤が小さい場合や血管の重なりなどによって、MRAだけでは判断が難しいこともあります。必要に応じてCTAや脳血管撮影などの追加検査を行います。
- 脳動脈瘤は大きくなることがありますか?
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はい。すべての脳動脈瘤が増大するわけではありませんが、経過中に大きさや形状が変化することがあります。
そのため、経過観察を行う場合には、定期的な画像検査で変化を確認することが重要です。
- 家族がくも膜下出血を起こしたことがある場合、検査を受けた方がいいですか?
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家族歴は脳動脈瘤やくも膜下出血のリスクを考えるうえで重要な情報です。
特に複数の近親者にくも膜下出血の既往がある場合などには、脳動脈瘤のスクリーニングを検討することがあります。
個々の家族歴や年齢などによって判断が異なるため、医療機関で相談することをおすすめします。
